汝、星のごとく

凪良ゆう 著  講談社

2023年本屋大賞受賞

今年の本屋大賞を受賞したのは、

凪良ゆうさんの作品、『汝、星のごとく』でした。

毎年、

本屋大賞を受賞した作品は読むようにしています。

大賞受賞作品だけあって、

どれも面白い作品ばかり。

面白いだけでなく、

必ずと言っていいほど、

考えさせられる何かがあります。

今回のこの作品も、

時代を反映した要素があり、

自分の中にも共通する部分があったりする。

一見、小説のようで、

現実でもありえるような物語。

どこか他人事ではない内容に、

いつのまにかすっかり引き込まれてしまうのでした。

立場

凪良ゆうさんの作品(残念ながら全てを読んだわけではありませんが)の好きなところは、

登場人物のそれぞれの立場で表現され展開していくところ。

読みやすいというのもあるけれど、

一つの出来事も、

立場が違えば受け取り方が違うということがよくわかる。

たとえば、

本書の中での主人公ふたり。

女の子は、

一緒にいる時も仕事の手を休めない彼に対して、

自分が大事にされていないと感じる。

一方男の子は、

仕事をしながらでも、少しの時間でも彼女に会いたいと思っているのに、

彼女の不機嫌が理解できない。

お互いの本音をうまく話し合えれば問題ないのだろうけど、

気持ちに余裕がないときは、

結局、感情がぶつかり合ってけんかになってしまう。

こんなことって、

私たちの日常生活でもよくあること。

自分の立場でしか考えないと、

つい相手の行動だけを見て、相手をせめてしまう。

行動の裏にかくれた相手の気持ちまでは想像できないから。

本書を読むと、

出来事の裏にあるお互いの気持ちが、

第3者として中立的に見えるので、

いい意味で、感情移入せずに客観的に読み進めていける。

そして、

読みながら、どこか自分に置き換えて、

『あの時のあの人の行動もそうだったのかなぁ~』

などと、反省したりする。。

この、

それぞれの立場で考える』ということに関して、

エンプティチェアー』というものがあります。

心理学で学んだものですが、

椅子を2つ用意して、まず片方の椅子に座ります。

そこで、

自分が不満に思っている相手がもう一つの椅子に座っていると仮定し、

思いっきり言いたいことをぶちまける。

言い終わったら、

次は、不満に思っている相手が座っていると仮定した椅子に今度は自分が座る。

そして、

自分が言った言葉に対して、相手の立場にたって反論する。(相手の立場で弁護する)

そしてまた最初の椅子に戻り、

相手の立場で反論したことに対して、今度は自分の立場で反論する。。というもの。

これにより、

言えなかった自分の気持ちを吐き出すことができるし、相手の気持ちも理解することができます。

実際にやるのは、最初は難しいかもしれないけれど、

やってみると効果は大で、ぜひおススメですよ♡

話はそれましたが、

凪良ゆうさんの作品を読むと、

私的には、

このエンプティチェアーのような効果があるわけです。

この作品、

親との関係が大きく描かれています。

特に母親。

もちろん父親との関係も考えるところはありますが、

やっぱり母親の存在は大きい。

主人公の二人とも、

母親に人生を振り回されているところがある。

嫌と思いながらも逃げられない現実。

逃げたいと思いながらも放っておけない母子の絆。

これが、

本当に悪い親ならば離れることもできるけど、

悪いどころか、子どもを思う優しい親の場合、

子どもは離れるという選択ができなくなるのかも。

一言で言うなら、

『弱い親』

子どものことを思っているけれど、

自分では気づかず子どもに依存している。

日常の何気ない言葉や行動で、

無意識のうちに、

子どもが自分から離れられないようにしている。

そんな親を持つ主人公の二人。

作品で描かれているような極端な親は多くはないだろうけど、

多かれ少なかれ、

私たちの周りにもこんな親はいる。

もしかしたら、

自分がそんな親になるかもしれないし。。(まさか、すでになっていたりして。。)

兄弟姉妹がいれば、

親の問題は分かち合うことができるかもしれない。

でも、

一人で親と向き合う場合、

その責任は自分の人生に大きく影響与えます。

作品の主人公ふたりも、兄弟姉妹がいない。

私も一人で親をみるという同じ状況ゆえに、

この作品が他人事ではなく自分事のように感じた理由かもしれません。

親との距離感、

簡単なようで難しい、私の課題でもあります。

世間の目

以前、本屋大賞を受賞し、

映画化もされた凪良ゆうさんの作品で、

『流浪の月』という作品があります。

この作品でも感じたことですが、

世間やマスコミって怖いなって思います。

当事者の本当の気持ちや事実が、

いつのまにかどこか置き去りになり、

憶測や歪められた内容が事実に置き換わっていく。

正義の名のもとに、

どんどん潰されていく。

たとえ、悪いことは何もしていなくても。。。

他人を傷つけることはよくない。

それは誰もがわかってること。

でも、

自分でも気づかずに、

無意識で、

世間という大勢の中の一人として、

勝手な憶測が誰かの心を傷つけているとしたら。。。。

ニュースで見る事件や、

世の中のいろんな人間模様、

そして、

自分の周りでの出来事など、

当事者しかわからないことを、

いろいろ批判するのはやめたいと思う。

もちろん、

それが自分に影響を及ぼすことならば、

自分の意見は言った方がいいけれど。。。

価値観はひとそれぞれ。

自分と違う価値観も、

たとえ理解はできなくても、

受け入れられる器は持っておきたいなと思います。

人を想う

この作品の魅力の一つは、

『愛』

いろんな登場人物が出てくるけれど、

みんな誰かを深く愛してる。

愛のカタチは違っても、

誰かを想う気持ちは同じ。

愛の表現って難しい。

一途な愛も、

表現によっては迷惑になる。

話はちょっと戻るけど、

やっぱり、

人が人と生きていくうえで大切なのは、

『いかに相手の立場になって考えられるか』なんだろうなぁ。。。

親子の関係も、

世間の批判も、

愛情も、

相手の立場になって考えたうえで、

次の行動につなげれば、

良い感じで人生進んでいけるんじゃないかしら。。

誰かのこと想う、

それだけで幸せなのかもしれない。

余談ですが、

この作品に登場する人物で、

私はとても気になる人がいます。

ネタバレになりそうですが、

言ってしまうと、

『北原先生』です。

この北原先生の愛が何とも言えない。

愛かどうかもわからないけど。。。

北原先生みたいな人がそばにいたら。。

ほんとに頼りになる先生です。

私は、

この作品、映画化されるのでは、と勝手に思ってます。

(今まで本屋大賞の作品はほぼ映画化してます)

その時、

北原先生を誰が演じるのか、

いろんな俳優さんを思い浮かべながら、今からワクワクしています♡

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